2009年09月09日

行政書士試験 過去問 平成20年 問47〜問60

問題47 近代の政治思想に関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。


1 イギリスの法律家コーク(クック)は、「国王はいかなる人の下にも立たないが、神と法の下にある」というブラクトンの言葉を引いて、王権神授説を信奉する国王を諌め、これが「法の支配」の確立につながった。
2 イギリスの哲学者ホッブズは、『リヴァイアサン』において、人間は自然状態では「万人の万人に対する闘争」が生じるため、絶対権力者の存在を認めなければならないとし、社会契約説を否定した。
3 イギリスの政治思想家ロックは、『市民政府二論』において、自然権を保障するため人びとは契約を結び国家をつくると考え、政府が自然権を守らないとき人民は抵抗権をもつとし、イギリス名誉革命を擁護した。
4 フランスの啓蒙思想家ルソーは、『社会契約論』において、人間が社会契約によって国家をつくってからも真に自由で平等であるためには、全体の利益をめざす全人民の一般意思による統治を主張し、フランス革命に影響を与えた。
5 フランスの啓蒙思想家モンテスキューは、『法の精神』において、各国の政治体制を比較しながら、自由と権力の均衡の重要性を説き、立法・執行・司法を異なる機関に担当させる三権分立制を提唱して、近代民主政治に大きな影響を与えた。




問題48 稟議(りんぎ)制に関する次のア〜オの記述のうち、妥当なものの組合せはどれか。


ア 稟議制は、決定権者の指示の下で、職場の第一線の職員が起案書を作成し、それを関係各部署に回議し、決裁にいたる意思決定の方式であり、トップ・ダウンとボトム・アップの調和を考えた制度である。
イ 稟議制は、わが国においては、行政機関だけでなく民間企業においても用いられてきた。
ウ 稟議制は、日常的な意思決定に際して、組織のトップが各部署の責任者を招集して合議のうえで行う意思決定の方式であり、トップの意向を組織に浸透させるうえで有効な制度とされている。
エ 稟議制は、関係する構成員が決定過程に参加でき、その間で情報を共有しやすいという利点がある一方で、最終決定にいたるまで時間がかかるという短所があるとされている。
オ 情報技術の発達に伴う電子決裁や電子メールの浸透によって、行政機関においても稟議制による意思決定の方式はとられなくなっている。

1 ア・イ
2 ア・エ
3 イ・エ
4 ウ・オ
5 エ・オ




問題49 道路特定財源に関する次の文章の空欄[ア]〜[オ]に当てはまる語句の組合せとして、正しいものはどれか。


 道路特定財源は、道路の整備とその安定的な財源の確保のために創設された。昭和20年代後半、遅れていた道路整備を迅速に行う必要があるとして、1953 年(昭和28年)に「道路整備費の財源等に関する臨時措置法」がつくられ、[ア]が道路特定財源となったのが始まりである。
その後、特定財源の対象とされる税目は次第に増えてきた。今日では、ガソリンに対しては[ア]と[イ]の二つが課税されている。また自動車を対象として課される[ウ]や[エ]も道路特定財源である。中でも[ウ]は、1970年から始まる第6次道路整備五ヵ年計画に約3,OOO億円の財源不足が予想されたため、当時の田中角栄自民党幹事長が新税構想を打ち上げ、創設されたものである。
このように日本では複数の税目が道路特定財源とされ、道路整備の多くをこれらの財源に依存してきたという歴史があり、2O08年1月1日の時点では、[オ]を除く全ての税目で、本則よりも高い暫定税率が適用されている。しかしながら、近年、国の財政状況が厳しいことに加え、公共投資の抑制などを背景とした道路歳出抑制により、特定財源税収が歳出を上回ることが見込まれたことをきっかけに、その一般財源化が議論されてきた。

  ア      イ      ウ      エ     オ
1 揮発油税  地方道路税 自動車重量税 自動車取得税 石油ガス税
2 石油ガス税 揮発油税  自動車税   自動車重量税 地方道路税
3 石油ガス税 地方道路税 自動車重量税 自動車取得税 揮発油税
4 揮発油税  地方道路税 自動車取得税 自動車税   石油ガス税
5 石油ガス税 揮発油税  自動車税   自動車取得税 地方道路税




問題50 日本の資源や産業の現状に関する次のア〜オの記述のうち、妥当なものはいくつあるか。


ア 森林資源に恵まれた国土であるが、木材供給量をみると、輸入材が国産材を上回っており、外材依存の傾向にある。
イ 農家世帯の高齢化にともなう耕作放棄地の増加や、外食産業による輸入米の利用増などを背景として、米の自給率は50%台にまで下落した。
ウ 漁業生産量は減少傾向が続いており、近年では、重量べ一スでみた魚介類の自給率は30%を下回っている。
エ 二度の石油危機をきっかけに、石油依存型のエネルギー構成の見直しが進められ、今日では、原子力が一次エネルギーの50%以上を占めるようになった。
オ 金属鉱山の数は減少の一途をたどっており、金属資源の安定的な確保のために、海外での資源開発の支援や、廃棄パソコンなどのリサイクル事業が行われている。

1 一つ
2 二つ
3 三つ
4 四つ
5 五つ




問題51 日本の社会保障制度に関する次のア〜オの記述のうち、妥当なものの組合せはどれか。


ア 社会保障制度は、社会保険、公的扶助、公衆衛生、社会福祉の四つの柱から成り立つとされている。
イ 医療保険は、民間の給与所得者などを対象とする健康保険、農業・自営業者などを対象とする国民健康保険、公務員などを対象とする共済組合保険などに分立している。
ウ 生活保護の受給者については、生活保護による給付があるため、介護保険の被保険者にならない制度がとられている。
エ 介護保険法では、介護サービスを利用する際の利用者負担として費用の1割を負担する原則がとられているが、市町村の条例によってこの負担割合を増減することができる。
オ 年金保険の財源調達方式について、かつては賦課方式を採用していたが、制度改正により、しだいに積立方式に移行している。

1 ア・イ
2 ア・ウ
3 イ・エ
4 ウ・オ
5 エ・オ




問題52 次の文章は、循環型社会の形成に関わる法制度を説明しているが、文中の空欄[ア]〜[オ]に当てはまる語句の組合せとして最も妥当なものはどれか。


 循環型社会の形成に関する施策の基本となる事項を定め、循環型社会の形成のための施策を総合的・計画的に推進することを目的として、2000年に[ア]が制定された。これより先、1991年には、廃棄物の増加を背景に、資源の有効利用を促進するために「再生資源の利用の促進に関する法律」(通称リサイクル法)が制定されていたが、新しい[ア]の下では、天然資源の消費を抑制し、環境への負荷をできるだけ抑制するために、一般に「3R」と言われているように、まずは[イ]が、次いで[ウ]が、そして第三に[エ]が確保されるべきであり、さらに第四として熱回収、最後に適正処分という優先順位が明確に法定されたことが重要である。また国や地方公共団体の責務のほかに、事業者の責任については[オ]の考え方が採用された。

1 ア:循環型社会形成推進基本法 イ:再利用 ウ:再生利用 エ:資源回収 オ:拡大製造物責任
2 ア:循環型社会形成推進基本法 イ:発生抑制 ウ:再利用 エ:再生利用 オ:拡大生産者責任
3 ア:循環型社会形成の推進に関する法律 イ:再生利用 ウ:発生抑制 エ:再商品化 オ:拡大瑕疵担保責任
4 ア:循環型社会形成推進基本法 イ:発生抑制 ウ:再利用 エ:再生利用 オ:拡大製造物責任
5 ア:循環型社全形成の推進に関する法律 イ:発生抑制 ウ:再利用 エ:資源回収 オ:拡大生産者責任




問題53 行政機関個人情報保護法*に関する次のア〜オの記述のうち、妥当なものはいくつあるか。


ア この法律は、個人情報を取り扱う国の行政機関の遵守義務を定めることにより、行政の適正かつ円滑な運営を図りつつ、個人の権利利益を保護することを目的とする。
イ この法律における「行政機関」とは、個人情報データベース等を行政運営に用いる国の行政機関であって、独立行政法人等を除いたものをいう。
ウ 行政機関の長は、利用目的の達成に必要な範囲内で、保有個人情報を過去または現在の事実と合致させるよう努めなければならない。
エ 保有個人情報の開示請求は、行政機関の長に対し、開示請求者の氏名および住所等の所定事項を記載した開示請求書を提出して行わなければならない。
オ 行政機関の長は、開示請求に係る保有個人情報に不開示情報が含まれている場合には、開示請求者に対し、原則として当該保有個人情報を開示してはならない。

1 一つ
2 二つ
3 三つ
4 四つ
5 五つ
(注)*行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律




問題54 個人情報保護法*1と行政機関個人情報保護法*2とを比較した次の記述のうち、妥当なものはどれか。


1 個人情報の定義について、個人情報保護法における「個人情報」は死者を含まないが、行政機関個人情報保護法における「個人情報」は死者を含む概念である、と定められている。
2 行政機関個人情報保護法にいう「個人情報ファイル」とは、保有個人情報を含む情報の集合物で体系性、検索性のあるもののことをいい、これは個人情報保護法にいう「保有個人データ」という概念にほぼ等しい。
3 行政機関個人情報保護法では、法人が個人と同様に自己を本人とする情報の開示・訂正等を請求することはできないが、民間部門を対象とする個人情報保護法ではこれが認められている。
4 行政機関個人情報保護法に基づく訂正請求は、その前に開示請求を行わなければならないが、個人情報保護法に基づく訂正の求めの場合には、開示の求めを前置することは要件ではない。
5 開示決定等についての不服申立て案件に関して、行政機関個人情報保護法は情報公開・個人情報保護審査会への、個人情報保護法は認定個人情報保護団体への諮問を予定している。
(注)*1 個人情報の保護に関する法律
*2 行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律




問題55 いわゆる「e−文書通則法」*に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。


1 この法律は、法令の規定により民間事業者等が行う書面の保存等に関し、電磁的方法により行うことを義務づけるに際しての共通事項を定めるものである。
2 この法律は、文書内容の重要性や改ざんのおそれ等に応じて、書面の電子保存の具体的な方法や要件を統一的に定めている。
3 この法律は、地方公共団体が条例や規則により書面による保存等を義務づげている文書についても直接に適用される。
4 この法律は、紙で作成された書類をスキャナで読み込んだイメージファイルなど(電子化文書)も一定の技術要件を満たせば原本とみなすことを認めている。
5 この法律は、書類の作成と保存については電磁的方法によることを認めたが、利用段階で書面の縦覧等に代えて情報のディスプレイ表示を利用することは認めていない。
(注)*民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律




問題56 情報セキュリティ技術に関する次のア〜オの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。


ア 電子署名とは、実社会の手書きサイン(署名)や押印を電子的に代用しようとする技術であって、作成名義の同一性(本人性)および内容の同一性(非改ざん性)を確認することができるものをいう。
イ ファイアーウォールとは、「防火壁」を意味し、インターネットから送られるパケットを識別することを通じて、不正侵入やアタック等をリアルタイムで監視し、管理者に警告するシステムをいう。
ウ バイオメトリクス認証とは、指紋、声紋、虹彩、静脈の血管形状パターンなど、個々人の生体固有の情報を用いて本人確認を行う方式をいい、出入国管理や金融の分野における利用が進められている。
エ 電子透かしとは、画像、映像、音声などのデジタル・データに、人間の知覚では判別できない特定の情報を埋め込む技術であって、著作権保護技術として用いられることが多い。
オ 侵入検知システムとは、セキュリティ対策用のソフトウェアの一つであり、外部と内部のネットワークを結ぶ箇所に導入することを通じて、データの出入口の段階で不正な攻撃を検知する。

1 一つ
2 二つ
3 三つ
4 四つ
5 五つ




問題57 インターネットおよびその利用に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。


1 インターネットの歴史は、アメリカで国防用を主目的として開発されたコンピュタネットワークの構築に遡るといわれる。
2 IPアドレスとは、インターネットに接続しているコンピュータごとに振られている識別番号のことである。
3 クッキーとは、Webぺ一ジにアクセスした利用者を、Web・サーバ側でチェックするための機能である。
4 Web2.0とは、ネットワーク型、双方向型の高度な機能を有するビジネスを、旧来のビジネスモデル(1.O)と比べた表現である。
5 ウィキペディア(Wikipedia)とは、イギリス発祥の出版事業者が運営する百科事典の無償オンラインサービスのことである。




問題58 次の文章は、「公共哲学」について述べているが、ア〜オの記述のうち、本文の趣旨と合うものの組合せとして、妥当なものはどれか。


 「広く社会一般に利害や正義を有する性質」(『広辞苑』第五版)という意味での公共性は、政府だけではなく、市民、国民、住民などの総称としての「民(たみ)」も担っているのであり、その解明には、既存の社会科学バラダイム*では不十分で、「政府の公(オフィシャル)」と「民の公共(パブリック)」を区別しつつ、その「相互作用」を明らかにする公共哲学が不可欠となる。
このような公共哲学は、滅私奉公で国家への忠誠を謳った戦前の「公哲学」とは全く異なるし、また現代のリベラリズムが説くような「公私二元論」にも満足しない。政治や司法などの領域や国家の税金で賄われる組織を「公領域」と考え、個人の幸福追求や家庭はもとより、経済や宗教なども「私的領域」とみなす公私二元論は、経済や宗教や家庭がもつ公共的次元を看過している。
公哲学に反対し、公私二元論に与(くみ)さないこの公共哲学は、個人が「他者とのコミュニケーション」を通して自分を活かしながら、「民の公共性」を開花させ、「政府の公」をできるだけ開いていくという意味での「活私開公」を志向する。唯我論や利己主義と異なるこの人間像によって、また集団主義と異なるこの社会像によって、「個人の尊厳と公共性」は対立するどころか補完しあうと、公共哲学は考えるのである。
さらにまた、公共哲学は、「現実主義VS.理想主義」「グローバリズムVS.ローカリズム」といった二項対立に風穴をあける。前者についていえば、社会が現実に「ある」姿の考察と、社会の「あるべき」理想と、その理想が「実現できる」可能性の三つを区別しつつも切り離さない方法論によって、公共哲学は、単なる現実主義や理想主義と区別された「理想主義的現実主義」ないし「現実主義的理想主義」をモットーとする。後者についていえば、各自がそれぞれの「現場」や「地域」(ローカリティ)に根ざしながら、平和、環境、福祉などグローバルな問題を追究する「グローカルな視座」を重視する。
かくして公共哲学は、哲学不在の日本社会の閉塞状態を突破する起爆剤を、人々に提供するのである。
(出典 山脇直司「哲学不在の社会とその突破口」より)
(注)*パラダイム:ある分野での、その時代ないし社会で共有している思考の枠組み、学問の方法論。(共通の基準の意でも使われる。)

ア 「民の公共」という表現が「民」であるにもかかわらず「公」であるのは、正義という規律が、個人の行動、意志まで制約する社会基盤であることによる。
イ 公共哲学の使命は、パブリックの立場がオフィシャルと対立する構造を明確にすることで、個人の立場を社会的に意味づけることを保証する点にある。
ウ 公私二元論の限界を打破するには、二項対立的な考え方の限界に対して、民のもつ社会性を認識させ「公」につながる役割を明確にすることが必要である。
エ 二項対立は、「公の中心性」に対して「民の個人性」を考えるので、公共哲学のあるべき理想を考えるとき、経済や宗教等をいかに活用するかがポイントとなる。
オ 「グローカル」という語は、グローバルとローカルのそれぞれの視点を統合しており、既存の二項対立的な社会科学的パラダイムから脱した新たな考え方を示したものである。

1 ア・ウ
2 ア・エ
3 イ・エ
4 ウ・オ
5 エ・オ




問題59 次の文章は、医療と信仰に関する文章である。ア〜オの記述は、本文の下線部でのヒポクラテスの批判を説明しているものであるが、ヒポクラテスの側に立つ説明を(A)、批判されている側に立つ説明を(B)としたとき、(A)(B)それぞれに対応するものの組合せとして、適当なものはどれか。


 医はしばしば信仰と結びつき、古い時代には治療と称する加持祈祷のたぐいはどこにでも見られる。中国では「医」の旧字である「醫」は、もともとは矢を放って病魔を払うことをかたどったもので、「酉」に代えて「巫」を配した異字もある。病気が太古には魔物のなせるわざと理解されていたということを示してもいるだろう。
けれども、かなり古い時代から、医知(近代のメディカル・サイエンスと区別して、医に関する知一般をこう呼べば)はみずからを迷信のたぐいとは区別していた。司馬遷の『史記』に語られた伝説の名医扁鵲は「巫を信じて医を信じない」者を治しようのない者のひとつに数えていたという。また、西洋医学の嚆矢とされるヒポクラテスは、「神を隠れ蓑に使って、処置に窮したのをごまかしている」祈祷師たちを批判するだけでなく、「病気や死の原因となるものを同一の原理へとしぼろうとする」ことを「空虚な仮定」と断じ、ソフィスト*たちの思弁的解釈をも批判していた。薬草の処方を中心にした中国の医療と、病気には自然的な原因があるとみなし、それに対処することで治療するギリシアの医療とは、その方法は違うが、経験をもとにして合理的な治療を引き出そうとする医の現実的姿勢には共通するところがある。
それは、医知には病人が実際に治らなければ話しにならないという現実的な試練があるからだろう。医知はそのような試練をとおした長い経験知の蓄積をべースにしながら、みずからへの信頼を培ってきた。(中略)
中国では、神農や黄帝といった伝説の王たちが医の創始者だったとされている。ギリシアでは、アポロンの子で半神半人のアスクレピオスが医神と崇められていた。ヒポクラテスも「アスクレピオスの徒」を名乗るコス島の医師団に属していた。今でも医学部の学生が最初に学ぶといわれる彼の掲げた有名な「誓い」も、アスクレピオスとその娘たちに捧げられている。(中略)そのヒポクラテスが、アスクレピオス神殿に集まる病人たちに、この医神を光背に背負って治療したのである。この信仰と合理性との交錯はいったい何なのだろう。
(出典 西谷修「医における知と信」より)
(注)*ソフィスト:古代ギリシアの俗に「詭弁家」と言われた、プロタゴラスやゴルギアスに代表される、雄弁術などを青年達に教えた人々。

ア ヒポクラテスのアスクレピオスに対する「信」は、その権威を借りて加持祈祷をするためのものではなく、医師がみずからを全能の立場におくことを制し、病人と医師の関係を適切に設定するための担保なのだ。
イ 「命を預ける」と言うように、人は自分の身を医師にゆだねてその処方を受け入れる。そこには「任せる」と言う姿勢で証される信頼がある。
ウ 病が治るというのはありがたいことである。ひとの病を治す力や術をもつ人は、いきおい特別の能力をもつ人としてありがたがられ、ある種の権威がついてくる。
エ ヒポクラテスは、神がかりとみなされていた「神聖病」(癲癇(てんかん)のこと)も含めて、あらゆる病気を「神業ではなく自然的原因をもっている」として、病気の知的理解に努め、経験から引き出される合理的な治療を追求したことで知られる。
オ 病を癒すという「医」の業が、常人のよくなしえない特別の営みであり、その業を施す者にとっても、人間の通常の営みを超えた業であるから、人を超えたオーソリテイーの加護が必要である。

  A B
1 ア エ
2 イ ウ
3 ウ ア
4 エ オ
5 オ イ




問題60 次の文章の空欄[ア]〜[キ]には「シゼン」か「ジネン」が入るが、「シゼン」が入るものの組合せとして、正しいものはどれか。


 日本の人々にとって自然とは、客観的な、あるいは人間の外にある自然体系のことではなかった。それは自分自身が還っていく場所でもあり、自然に帰りたいという祈りをとおしてつかみとられていくものでもあった。
とすると、その自然とはどのようなものであったのか。
すでによく知られているように、かつての日本では自然はジネンと発音されていた。シゼンという発音が一般的になったのは、明治時代の後半に入ってからである。英語のネイチャー、フランス語のナチュールを日本語にするためにシゼンが使われるようになった。その意味でシゼンは外米語の訳語である。
ジネンはオノズカラ、あるいはオノズカラシカリという意味の言葉である。今日でも私たちは「自然にそうなった」とか「自然の成り行き」という表現を使うが、これがジネンと読んでいた時代の意味の名残りだと思えばよい。(中略)
もっとも、このようにみていくと、[ア]という言葉を[イ]と読んだうえで、ネイチャーやナチュールの訳語にしたのはかなり妥当だったということがわかる。なぜならもっとも[ウ]なものは自然([エ])だからである。自然([オ])はすべてがオノズカラのなかに存在している。シゼンとジネンは同じではないが、シゼンこそがジネンなのである。
ゆえにジネンな生き方ができる自己に戻りたいという気持を、シゼンに戻りたいと表現しても差しつかえない。人々はジネンに帰ることによって、シゼンに帰りたかったのである。(中略)
ところが社会が近代化していくと、人々は自然(シゼン)を自然(シゼン)としてみるようになっていった。自然(シゼン)は人間から分離し、自然(シゼン)という客観的な体系になっていった。
この変化が、1960年代に入ると、最終的に、村のなかでもおこっていたのではないかとある人々は考える。戦後の経済社会は、農地を客観的な生産の場へと、森林を客観的な林業の場へと変えていった。水や川は客観的な水資源になった。こういう変化が村でもおこっていた。
[カ]のなかに[キ]をみなくなったとき、そして自分たちの帰りたい「祈り」の世界をみなくなったとき、自然と人間の関係は変容した。
(出典 内山節「日本人はなぜキツネにだまされなくなったのか」より)

1 ア・イ・オ・カ・キ
2 ア・エ・オ・カ
3 イ・エ・オ・カ
4 イ・エ・キ
posted by kirara at 09:00| 行政書士 過去問 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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